カナビスの中毒性と依存性

程度は低く、害削減は容易


結論的に言えば、カナビスにも依存性や中毒性の症状は見られるものの、老若男女を問わず合法的に最も広く使われている精神活性物質であるカフェインよりも低い。


依存性の基準

おおざっぱに言って、ドラッグには、その使われている状態として、使用→乱用→中毒の3段階があるといわれている。段階が進むに従って使用頻度や害の大きさが際だってくる。

その程度を数量化して診断できるようにしようとする試みもさまざま行われてきたが、現在では、アメリカ精神医学会が作成したDSM−IVという診断基準が多く使われている。そこでは、乱用や中毒というような断続的で強い言葉は用いず、「依存性」という幅のある用語を使っている。

要点は、そのドラッグを使って問題が顕在化していても使い続けようとする程度を、いろいろな角度から総合的に判断したもので、耐性、身体的依存性、精神的依存性の3つが柱になっている。(House of Lords Report - Chap. 4 - Toxic Effect of Cannabis and Cannabinoid: Review of the Evidence

耐性とは、ドラッグを使い続けていると、同じ効果を得るために量を増やさなければならなくなる性質を意味している。また、身体的依存性というのは、ドラッグの使用を中断したときに、吐き気や嘔吐、発作、頭痛などの身体的な害症状が現れる場合を指している。これに対して精神的依存性というのは余り明確な概念とはいえないが、ドラッグを連続的に使って(乱用)いて、日常生活にマイナス面の影響が見られるが、明確な薬物依存とまではいえない状態をいう。

DSM−IV診断基準では、身体的症状ばかりか生活への影響も考慮して依存症状を統計的に相関分析するので、カナビス自体に依存性が有るか無いかという単純な2分法で議論しても意味はなく、カナビス全体としては、どの程度の人がどの程度の依存性を示すかを他のドラッグと比較として判断するしかないことになる。

WHOの国際疾患分類ICD−10 の分類表を見ると、「精神作用物質使用による精神及び行動の障害」の分類には、カナビスの他にもアルコールやアヘンやコカインや幻覚剤などの診断名が列挙されているが、症状の細分類ではどれも、急性中毒、有害な使用、依存症候群、精神病性障害、詳細不明の精神及び行動の障害などという同じフォーマットが使われており、薬物名だけが置き換えられている。このことから見ても、疾病の原因やメカニズムについてはあえて重点をおいて考慮せずに診断名が機械的に付けられていることがわかる。

これについては、DSM−IV診断基準もWHOの国際疾患分類ICD−10と同様のことが言える。しかし実際問題として、DSM−IV診断基準には、「カナビス誘発性妄想精神障害(Cannabis-Induced Psychotic Disorder, With Delusions, 292.11)」 などという恐ろしげな診断名もあって、これを根拠にカナビスが原因で精神障害が起こると主張する人が後をたたない。

しかし、こうした診断名は、カナビスのオーバードーズでバッドトリップになり病院に駆け込んだ場合などに簡単に使われているのが実態で、カナビスと精神病の因果関係を示しているわけではない。バッドトリップは精神病ではないので、数時間で自然に治まり翌日まで残ることはまずない。


カナビスの依存性

1999年に発表された 全米アカデミー医学研究所(IOM)報告 によれば、カナビス・ユーザーの9%が依存症状を経験しているが 、一方ではアルコール・ユーザーは15%、コカインは17%、タバコにいたっては32%もの人が依存症状を示している。

表3.44   使用人口に対する依存症になった人の割合  (p95)
タバコ 32%
アルコール 15%
カナビス(ハシシを含む) 9%
抗不安剤(鎮痛剤や睡眠剤を含む) 9%
コカイン 17%
ヘロイン 23%


ここで注意しなければならないのは、依存性に陥る割合は単に診断基準の閾値から出てきたもので、必ずしも依存性の深刻度を表わしているわけではないということで、例えば、アルコールの依存割合がカナビスの1.66倍だからといって、深刻度も1.66倍というわけではない。深刻度は身体的な依存性や耐性にも深く関連している。

IOM報告書でも、「他の大半の薬物に比らべれば・・・カナビス・ユーザーの依存性は比較的稀にしか起こらない。」 (p94) 「要約すれば、カナビス・ユーザーが依存性に陥ることは余りないが、一部の人たちはそうなることもある。しかし、それでもアルコールやニコチンなどのユーザーほど多くはなく、カナビスの依存性は他の薬物の依存性ほど深刻なものになることはない。」 (p98) と結論づけている。

また、信頼性の高い薬物依存評価方法としてはSDS (Severity of Dependence Scale) が知られている。指標は最大スコアは15で、値が大きいほど依存性が高くなる。SDSを使ったある研究では、ヘロインで12.9、アンフェタミン6.1、クラック・コカイン5.5で、カナビスは2.6の値が得られている。これは、依存性がないとされているLSDの3.1、エクスタシー1.3の中間に位置している。(カナビスの害とその削減対策 参照)

さらに、よく引用されているものとして、反カナビス研究の中心である国立薬物乱用研究所(NIDA)のジャック・ヘニングフェィールト博士のデータを表にしたものがある。この表ではカナビスの依存性はカフェインよりも小さくなっている。

国立薬物乱用研究所(NIDA)のジャック・ヘニングフェィールト博士による評価


このように、カナビスの依存性は他のドラッグに比較して弱いといえるが、当然、全くないわけではない。しかしながら、オーストラリアで行われた1万人規模の調査によれば(Swift W, Hall W, Teesson M., Cannabis use and dependence among Australian adults)、カナビスの依存性は18〜24才前後の無職の若者に多いという特徴が示されている。この結果からすれば、カナビスの依存性というのは、誰にでも出る身体的なものではなく、精神的なもので、それも年齢や環境に強く影響されたものだといえる。


アルコールの併用で依存性が高まる

カナビス・コミュニティではなかば常識ともなっていることだが、アルコールとの多量併用するとカナビス依存性のリスクが高まる。これはアルコールを多量に飲む人ほど顕著で、例えば、しばしばアルコールを飲みながらタバコを吸うような調子でカナビスを吸っている人を見かけるが、明らかに異常な感じを受ける。

このことはまだあまり研究されていないが、週2回以上カナビスとアルコールを使った750人あまりを調査した研究 (S.Barnwell, et al; Confirming alcohol-moderated links between cannabis use and dependence in a national sample) では、常習的併用あるいは多量のアルコールの使用は、カナビス・ユーザーをカナビス依存症にするリスクを増やす可能性があり、アルコールの使用がカナビスにおける問題を大きくしていると報告している。

また、同様なことはIOM報告にも、「依存性を起こすカナビス・ユーザーはごく少数で・・・依存性が現れたとしても、カナビスを単独で使っている場合は、コカインの乱用やカナビスとアルコールなどの併用した場合ほど深刻なものにはならない」 (p96,97)と書かれている。

こうした依存性を避けるには、アルコールを飲みながらその酔いの中でカナビスを吸うのではなく、カナビスのハイの中で少量のアルコールを楽しむように心がけることが大切だろう。

また、ヨーロッパ諸国では、アメリカとは異なり、もともとハシシが普通だったこともあって、カナビスはバッズでもタバコに混ぜて吸うのが常識になっている。このために、ヘビーなユーザーになればなるほどニコチン依存になる可能性がある。このことがカナビスに依存しているようにも見える。


禁断症状

カナビスでも禁断症状はあるが、実際的な問題は有る無しの2元論ではなく、その頻度や症状の程度にある。

禁断症状というのは、ドラッグの使用を中断したときに起こる震え・下痢・発汗・不眠・短気・不安・うつ・攻撃的傾向・食欲不振・疲労感などの症状を起こすことを指している。こうした特徴は、ドラッグの連続使用によって身体がドラッグが入っていることが普通の状態になってしまい、体が適応変化を起こしていることを示している。

つまり、禁断症状は、「ドラッグの入った普通の状態」が乱されることに対する抵抗反応ということができ、ユーザーは、快楽を増すためというよりも、「普通」を取り戻すためにドラッグを使い続けたくなる。

カナビス・ユーザーでも禁断症状を起こすこともあるが、外見でわかる程の禁断症状が起こることも非常に稀れで、長期にわたってヘビーに常用しているような例外的にケースに限られている。IOM報告では、アルコールやヘロインなど身体的に顕著な禁断症状を伴う薬物に比べて「穏やかで期間も短く」、一旦止めたユーザーが再び始めようとする誘惑もあまり起こらないとしている。

これは、ヘロインやアルコールなどの禁断症状の起こりやすいドラッグでは数時間から数日で代謝物が体外に排出されるのに対して、カナビスの代謝物の場合は排出されるのに数週間かかることも関係していると言われている。

実際、ごく普通のカナビス・ユーザーで、自分が禁断症状を経験したり、回りで禁断症状を起こしている人を見たという経験の持ち主はまずいないだろう。一般に、カナビスの使用では、数日間連続して使っているとむしろ効きかたにシャープさがなくなってくるので、自分から中断して、いったんカナビスを抜いて感度を戻そうとする人が多い。


カナビスの耐性

カナビスの耐性については、有るという人もいれば無いという人もいる。逆耐性があるという人すらいる。

カナビスの耐性を調べた研究もいくつかあるが、根本的な問題として、カナビスの場合には摂取量を確定しにくいという特有の事情がある。多くのカナビス研究では摂取量をジョイントの本数でカウントしているが、実際のジョイントは1本あたりのTHC含有量に極めて大きなバラツキがある上に、体内への吸収のされ方も吸い方によってかなり違うので、基本的なデータとしてはあまり当てにならない。

仮に、同じカナビスを同じ人が同じように使ったとしても、時期によって本数は増えたり減ったりする。カナビス・コミュニティーでは結局のところ耐性は無いと見なされているが、それにもかかわらず耐性や逆耐性があっても当然とも思われている。

最近は室内栽培でやや事情が変わってきたが、以前は秋に収穫して翌年の夏ころまでそれを吸っていた。収穫直後のカナビスは効力が強く少量でもストーンしていたものが、時間とともに効力が劣化し使用量が増えて耐性が上昇するように見える。しかし、また秋がきて新しいカナビスが利用できるようになると使用量が減り、今度は逆耐性があるように感じられる。効力は、通常の保存状態でも1年間に10〜40%、条件が悪ければ90%以上も 劣化する ことが知られている。

一般論とはいえ、このことはカナビス・ユーザーにとっては重要なことを示唆している。普通、ストーンするともうそれ以上吸いたくなくなってしまうが、効力の悪いカナビスだと十分にストーンしきれないので惰性で多量に吸い続けてしまい、結果的に耐性上昇と乱用を招き、依存性が発展する恐れがある。

要するに、耐性自体が問題なのではなく、低品質のカナビスを惰性で吸い続けることが危険だということになる。


依存性の害削減

カナビスの依存性は、カナビスをリスペクトして、賢い使い方をすれば容易に害削減ができる。特に、経験の浅い若者はただでさえ度を超しやすいので、しっかりとした知識と教育が有効になる。

吸うならば、品質の良いカナビスを少しだけきちんと吸う。
品質の悪いものはやらない。

週に1〜2日はカナビスを使わない日をつくる。
ストーンするのは1日に2〜3時間までを限度とする。

タバコを混ぜて吸わない。(タバコの中毒がカナビス中毒に見える)
日常的なアルコールとの併用は避け、併用する場合は、カナビスのハイの中で少量のアルコールを楽しむだけにする。

たまに、惰性度 や 乱用度 をチェックする。